活動報告
第5回グローバルCOE若手の会特別セミナー
鈴木賢一さんによる発表 藤山沙理さんによる発表
期間 平成21年2月27日(金)
開催場所 愛媛大学 理学部講義棟 302号室
プログラム (1) 16:00 - 17:00
発表者: 鈴木賢一さん (広島大学大学院理学研究科生物科学専攻) 
タイトル: 両生類の変態現象 ~その分子機構と内分泌攪乱物質評価への応用~

(2)  17:00 - 18:00
発表者: 藤山沙理さん
      (東京大学 分子細胞生物学研究所 核内情報研究分野 
       独立行政法人科学技術振興機構 ERATO 加藤核内複合体プロジェクト)
タイトル: 質量分析計を用いたタンパク質の機能解析 ~基礎から応用まで~
 
報告  以下,セミナーに参加した,グローバルCOE研究員によるレポートを紹介し,報告といたします。

(1)鈴木賢一さんのセミナーについて報告

 平成21年2月27日(金)、愛媛大学理学部講義棟302号室において、第5回グローバルCOE若手の会特別セミナーが行なわれました。広島大学・助教の鈴木賢一先生をお招きし、「両生類の変態現象〜その分子機構と内分泌撹乱物質評価への応用〜」という演題で、ご講演いただきました。
 講演内容は、1)アフリカツメガエルの変態(Metamorphosis)における甲状腺ホルモン依存的な分化誘導に関する研究、2)レポーター遺伝子トランスジェニックカエル(Tgカエル)を用いた内分泌撹乱物質の評価に関する研究の大きく2つに分けてお話しいただきました。
 カエルの変態においては、甲状腺ホルモンによって尾とエラの消失や四肢と肺の新生などが誘導されます。甲状腺ホルモンの投与による遺伝子発現の変化をジーンチップを用いて網羅的に解析した結果、誘導後24時間で1000を超える遺伝子の発現が大きく変動していました。その中で最初に発現が変化していたのは、転写因子やクロマチン関連分子など、他の遺伝子の発現調節に関わる遺伝子群であり、これら初期応答遺伝子の上流配列には、甲状腺ホルモンの核内受容体TRが結合するTRE配列が存在しました。
   甲状腺ホルモン特異的に誘導される変態現象は、内分泌撹乱物質が生体に与えるリスクを簡便かつ多項目に渡ってモニターする上で、有用なツールといえます。そこで鈴木先生らは、甲状腺ホルモン応答に関わるTRE配列にルシフェラーゼ遺伝子を接続したTgカエルを作製しました。Tgカエルに甲状腺ホルモンを投与すると、変態の過程で大きく改変を受ける頭部骨格組織の他、嗅神経などの頭部末梢神経系でルシフェラーゼの発現が観察され、これらの領域が甲状腺ホルモンに高い応答性を示すことがわかりました。今後は、様々な環境化学物質をTgカエルに投与し、変態現象を誘導する内分泌撹乱物質のモニタリングを行なっていく予定とのことです。
 鈴木先生の研究の出発点は、「オタマジャクシの体の中でどこまでがカエルとして決められた部分か?」という理学的な疑問でした。この謎を解き明かすため、甲状腺ホルモンに応答するレポーター遺伝子Tgカエルを作製し、解析するためのノウハウが揃っていたことが、内分泌撹乱物質のリスク評価という応用研究へと発展しました。今回の講演を通じて、基礎研究の重要性を改めて実感することができました。



(2)藤山沙理さんのセミナーについて報告

 私は、平成20年12月に技術習得のために東京大学を訪れました。その際に、加藤茂明教授の核内情報研究分野・分子細胞生物研究室で初めて藤山沙理博士にお会いしました。そこで、藤山博士が研究されているタンパク質の機能解析に興味を持ちました。それが縁で、藤山博士にグローバルCOE若手の会特別セミナーでの講演を依頼しました。
 藤山博士の講演「質量分析計を用いたタンパク質の機能解析~基礎から応用まで~」は理解しやすい上、とても役に立ちました。タンパク質の機能解析はプロテオミクスの分野に属し、分子生物学では最新の課題です。プロテオミクスは遺伝子工学の用語で、ゲノムでコードされる全てのタンパク質を対象とします。つまりプロテオミクスは、体内のタンパク質の同定と生理学および病態生理学的な機能の理解に有用です。
   藤山博士の講演は2部構成でした。
1)タンパク質分離法の基礎原理とタンパク質の同定に用いたMatrix-Assisted Laser Desorption/Ionization (MALDI)-Time of Flight (TOF)/Mass Spectrometry (MS)
2)核内シグナリングをコントロールするメガタンパク質複合体構成因子の同定
 ヒトおよび一部の動物の全ゲノム配列は解明されたので、MSでタンパク質を確認するのは難しくありません。一方、DNAデーターベースは、野生生物を含む大部分の動物において、とても限られています。そのことは、野生生物のタンパク質研究高度化の隘路となっています。藤山博士が紹介したMALDI-TOF/MSは、ヒトと同様に野生生物におけるダイオキシンの毒性発現メカニズムを解明するための強力な道具の1つであることは間違いありません。

                                     
 
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